佐渡めぐり塾 第9回「竹林から日々の暮らしへ そのつながりに触れる」前編

佐渡めぐり塾は、身近にある自然や島の暮らしに息づく世界農業遺産(GIAHS)について学ぶ体験プログラムです。第9回目となった今回は、小木・宿根木を舞台に竹の伐り出しに始まり、竹から色々なモノづくりにチャレンジしました。【渡辺】(Photo by Kawaguchi)

佐渡市役所を出発して小木半島に向かう道中、佐渡めぐり塾担当である市職員の宇治さんから、世界農業遺産(GIAHS)について改めてお話をしてもらいました。「 “遺産” という言葉がついていますが、GIAHSはその “取り組み” に対して与えられるもの。今日皆さんが参加している佐渡めぐり塾という取り組みも、佐渡の誇れるGIAHSのひとつなんです」という宇治さんの言葉に、俄然みんなのやる気が上がりました。

  

宿根木の竹林に到着した私たちを迎えてくれたのは、2月の佐渡めぐり塾(番外編)竹林の恵み編でも講師を務めてくださった今井さん。この場所は、今井さんが竹細工などにするための材を日ごろから取らせてもらっている竹林のひとつだそうです。そして、この竹林の整備を進めている「宿根木の森保全の会」の一員であり、佐渡市地域おこし協力隊で小木町・宿根木地区担当の岩瀬さんにもご登場いただき、地元住民と大学生で行った整備の様子(http://sado-chiiki-okoshi.blog.jp/archives/1069932830.html)などをお話していただきました。

 

その「しなり」に定評のある佐渡の真竹。剣道の竹刀の材としても根強い人気を誇ります。参加者は、竹林に入ってまず竹の年齢当てに挑戦。一年生竹の見分け方や、竹の節の様子から年齢を推定できることも教えてもらいました。それにしても竹は一年で一気に育ち、毎年出てきます。整備したとしても、5年放置すればまた荒れた竹林に戻ってしまうそうです。

竹についてお勉強した後は、今井さんから切り出し方を教わり、参加者それぞれが気に入った真竹にノコギリを入れていきました。まっすぐノコギリを引く感覚つかめたかな? さど里山こびりぃ隊で門松づくりをしている子どもたちは、さすがのノコギリ使いでした。

 

ノコギリで切り出した竹を、根本を持って引き出しながら倒していきます。まっすぐに伸びる竹の合間を縫ってバサバサバサッと倒れ迫ってくる竹。竹の重みと格闘しつつ、天を向いていた先端が完全に倒れるまで、息をのんで見守ってしまいました。

続いては倒した竹の枝打ちをしていきます。鉈(なた)の刃と背を使って、リズミカルに簡単に枝を打っていく今井さんの域に達するまでは、まだまだ経験を積む必要がありそうです。

切り出した竹の根元は、鉈(なた)で割れ目を入れることによって、雨がしみ込みやすく腐りやすくなります。今井さんから教えてもらった「竹林の循環」を手助けするちょっとしたひと手間も忘れずに。

  

「私ここに住めるわ~」と竹伐りにはまってくれた参加者からの嬉しい感想もいただきました。自分の力で切り出した竹は、好きな長さに切ったり割ったりして、今日のお土産になりました。流しそうめんをするも良し! コップやお皿に使ってみるも良し! 実際に竹を活用してみることで、今回のテーマである「竹林から日々の暮らしへ」とつながっていきます。

  

竹以外の収穫もありました。参加者が見つけたのはヤマアカガエル。光が入り風が抜ける居心地のいい竹林は、生きものたちの大切なすみかにもなっています。そして竹林の脇には、現在も現役で田んぼに水を供給している横井戸が。小木半島は高い山や大きな川がなく、田んぼの水に困っていた昔の人たちが、断層に向かって横に掘った井戸だそうです。ジオパークとGIAHSに通ずる昔ながらの農の知恵も目にすることができました。